元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「どのように私を殺すのかわからない」

(またわからないって言った。……口癖なの?)

 今やすっかり毒気を抜かれてしまっていた。殺すと言ってもまだそんなことを言う魔王に、どう警戒心を抱けというのかその方がわからない。

 そう思っていたせいで、突然の接近を許してしまった。

「ひゃっ」

 いきなり距離を近付けてきたシュクルが手を掴んでくる。爬虫類だからなのか、その手はティアリーゼのものよりずっと冷たい。

「こんなに小さな手では私を殺せないと思う」

「そ、そう?」

「鱗もない」

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