元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 今はそうしたいのだと察し、好きなようにさせていたティアリーゼだったが、不意に顎を持ち上げられて目をまたたかせた。

「お前も私以外に許すな」

「わかっているわ。だってもう妻だもの」

「わかっているならいい」

 独占欲をにじませ、シュクルは人間のやり方で求愛を示した。ティアリーゼが教えたように口付け、軽く舌で舐める。

 ティアリーゼの脳内に、彼が以前おいしいと言っていたのが頭をよぎったが、これもまた好きにさせた。シュクルはティアリーゼに口付けるのが好きで、とりわけこうして舌を絡ませるのを好む。落ち着かない上に恥ずかしいと思っていても、シュクルに求められるのが好きだからだ。

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