元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「外だからほどほどにね」

「わからない」

「あなた、最近わかっていてもそうやって言わない?」

「なんのことかわからない」

「……もう」

 とぼけているのかいないのか、読み取るまでティアリーゼにも修業が必要だろう。

 そうしてキスを繰り返した後、シュクルはティアリーゼの両頬を手で挟み込んだ。

 こつんと額を押し当て、囁く。

「改めて聞く。――私の子を産んでほしい」

 ふ、とティアリーゼは笑ってしまった。

 それを言われたときの衝撃を思い出したからだった。

「いいわ。あなたが寂しくならないように、子だくさんを目指すから」

 そう言って腕をシュクルの首に回し、背伸びをする。
< 421 / 484 >

この作品をシェア

pagetop