元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「鱗は自分で剥がせなかった。どちらにせよ、痛いだろうから嫌だな。だが、これだけでも欲しいものは得られた。私の身体のどこに価値があるのか、教えてくれたトトには感謝せねば」

「……っ」



 平気な顔をして語るシュクルに勢いよく飛びつく。



「ごめんなさい、私が綺麗になりたいなんて言ったから……」

「なにを謝るのかわからない」

「だってあなた、自分の身体を削ってアクセサリーを手に入れてきたんでしょう?」

「それでお前が昨日よりも美しくなれるなら構わない」



 ほがらかに言ったシュクルは、抱き着かれたのが嬉しかったのか尻尾を振っていた。

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