元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 なにを言えばいいかわからず、ただぎゅうっと抱き締める。

 そのまっすぐすぎる思いが胸に痛かった。



「ありがとう。本当にありがとう……。とびきり大切なお祝いごとのときのために取っておくわ」

「いつになるかわからないだろう。私は今、お前の身体を飾りたい」



 シュクルは首飾りのひとつを手に取る。

 いつもティアリーゼを愛おしげに見つめる青い瞳と同じ色の石が嵌め込まれていた。

 ティアリーゼの首にかけたかと思うと、嬉しそうに頬を緩める。



「私の気持ちだ。伝わっただろうか」

「うん、とっても」



 感謝の気持ちを込めて、シュクルに触れるだけの口付けを贈る。

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