元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それを何度か繰り返してから、よくされるように舌を差し入れた。

 ほんの一瞬、シュクルの身体がびくりと反応する。

 おずおずと回された腕がティアリーゼの背中を抱き締めた。

 触れた場所から、少しずつぬくもりが混ざり合う。爬虫類らしく体温の低いシュクルは、こういうときに熱くなるのも早かった。



「ティアリーゼ」



 熱に浮かされたような囁きが落ちる。



「昨夜ほどはしないと約束するから。……私にお前をくれ」

「……いいわ」



 シュクルは一度だけ自分から口付けると、すぐにティアリーゼの身体を抱え上げた。

 細身の割に力があるのは、本性が人ではないからだろう。

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