元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
シュクルの朝

 朝――。

 鳥の鳴き声が聞こえ、シュクルは目を覚ました。

 窓を覆うカーテンから漏れ出た光さえ眩しい。

 目を細めながら、腕の中にいるティアリーゼを抱き締める。



(……温かい)



 たったそれだけのことが嬉しくて、しゅうしゅうと鳴いてしまった。

 これではティアリーゼを起こしてしまう、と慌てて鳴くのをやめる。

 このまま起きようかしばし逡巡した。

 今はまだやめておくことに決め、ティアリーゼの寝顔を観察する。



(柔らかくて、よい匂いがする)



 衝動を抑えきれず、はむ、と頬を噛んでみる。

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