元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 なにが彼の感情を動かしたのかはわからないが、なぜかシュクルは落ち込んだようだった。表情には出ていないが、尻尾がへたっている。

(尻尾に感情が出るのかしら。亜人ってわからない)

 毅然と接しようとはしたが、落ち込ませたいとは思っていない。ティアリーゼは幾分態度を和らげ、シュクルの顔を覗き込む。

「あなたが触った分だけ、私にも触る権利があると思うの。尻尾に触ってみてもいい?」

「気が狂っている」

「どうしてそういうことを言うの」

 思わず言い返して、気を許し過ぎていることに気付く。

(この人、魔王なのよ)

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