元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 生き物であれば当然のそれを、なぜそうも忌避するのか。人間ではないシュクルが完全に理解することはない。

 今もまた、ティアリーゼのぬくもりと香りに雄の本能が目覚めかける。

 しかし、本能のままに動いてはいけないのだと学んでいた。

 シュクルがしたいように行動すると、ティアリーゼは尾の手入れをしてくれなくなる。

 湯浴みの後、ティアリーゼの柔らかい手で尾に触れられるのが大好きだった。

 丁寧に鱗を撫でつけ、鳥たちの羽毛で磨き、よい香りのする油を染みこませてくれる。

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