元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 もともとシュクル自身は自分の身体などどうでもよく、尾の状態も放置していた。人間で言えば、毎日足の爪を磨くようなものではないかと言ったが、それなら気を使うものだろうとティアリーゼに言われ、手入れが日課になってしまっている。

 尾に触れられるのは好きだった。だが、気に入らないこともある。

 必然的に背を向けなければならないため、ティアリーゼがどんな顔で話しているのかがわからない。もともと表情を読むのも得意ではないシュクルは、なるべく話している相手の顔を見たがった。愛すべきティアリーゼの顔ならなおさらである。

 すんすん、とシュクルは二度鼻を鳴らした。

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