元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 朝食の気配を感じたからだが、ティアリーゼが起きる気配はない。

 そっと、ティアリーゼの身体の下から自分の腕を抜く。

 起こさないように離れながらも、急に腕の中が寂しくなったのが辛くて少し鳴いてしまった。

 起きてほしい、と勝手に尻尾が跳ねて訴える。

 それでもティアリーゼは起きなかった。

 顔を覗き込みながら、すん、とまた鼻を鳴らす。



(昨夜は優しくした。……ティアリーゼが目覚めないのは私のせいではない)



 自分にそう言い聞かせる。

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