元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 獣に近いシュクルは、やはり本能に従う。当然、夜も人間のティアリーゼには少々きつかった。いつまでもいつまでも、自分が満足するまで求め続けるからだ。

 本来、人間よりも獣の性(さが)を色濃く示す亜人――シュクルたちは獣人と呼ぶ――は、楽しみのためにそういった行為をしない。

 もちろん、一部にはそういった獣もいるが、シュクルにも正直それが楽しいことだとは思えなかった。

 ただ、とても幸せな時間だということは理解している。

 ティアリーゼの泣き顔を見るのが好きで、甘やかな肌が赤く染まるのが好きで、ふうわりと香る雌の匂いが好きで。

 ――危ない、とシュクルは考えることをやめた。

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