元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
初めて食べるもの
ある日のお茶の時間。
ティアリーゼはメルチゥが持ってきた菓子を見て、郷愁の念に駆られた。
(あら……。また食べられる日が来るとは思わなかったわ)
「ティアリーゼ?」
メルチゥを見送ったシュクルが覗き込んでくる。
ティアリーゼが菓子に対していつもと違う反応を見せたのが気になったのだろう。
相変わらず目ざとい、と思いながらティアリーゼは理由を説明した。
「懐かしいお菓子だな、と思ったの。タルツでよく食べられていたものでね」
「ティアリーゼがよく作るものだろうか」
「いいえ、あれは違うわ」
「わからない」
つん、とシュクルがその菓子をつつく。