元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それでも人の形をしている以上、ある程度は覚えてもらいたいところだった。トトが人の姿での食事作法などを教えてくれたようだが、まだ怪しい部分は多々ある。



「ティアリーゼはそれが好きなのか」

「ええ。好きよ。あなたも好きだったら嬉しいわ」

「わかった。好きになろう」

「無理はしなくていいからね」



 懐かしい菓子を指でつまむ。

 ひとくちで食べられる大きさもまた昔を思い出した。



「ティアリーゼ?」



 再びシュクルが声をかけてくる。



「ああ……ううん。懐かしいの、本当に」

「……思い出さなくてもいい」

「……ありがとう」



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