元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それでも、まったく教養を捨てて育ったわけではない。

 この日もお茶の練習とのことで、足の届かない椅子に座らされていた。



「あたし、おちゃくらいじょうずにのめるよ?」

「ティアリーゼ様、『あたし』ではなく『私』です」

「はあい」



 足をぷらぷらさせながら返事をする。

 大きくなってから落ち着きのある女性となるティアリーゼも、幼少期はおてんばな女の子でしかなかった。



「……わあ!」



 だから、目の前の皿にある菓子を見たときも大声を出してしまった。



「ねえ、これすごくいいにおいがする!」

「お茶の時間にはしゃいではいけませんよ」

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