元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 むぐむぐ食べるところがまた微笑ましい。

 あの顎は人間を骨ごと砕く。少し力を入れるだけで、ティアリーゼの指は簡単に持って行かれてしまうことだろう。

 それだけの強さを持った相手を、ティアリーゼは恐れなかった。



「私は」



 シュクルがこくりと菓子を飲み込む。



「私は、ティアリーゼが好きだ」

「ありがとう。でも、それは食べられないわね」

「痛がるだろうからな」

「うーん……そうね」



 そういうわけではない、と喉まで出かかる。

 シュクルのこういうところは以前からそうだった。

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