元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 人間と獣と、違いはいくつでも思いつく。特にシュクルは、育ちのせいもあって獣に近い。なかなかに過激な発言や、一瞬ぎくりとさせられるような不穏な発言も平気でする。

 以前、シュクルはティアリーゼをおいしそうだと言った。

 もしかしたらいつかは本当に食べられてしまうときが来るのかもしれない。



「……ねえ、シュクル」

「なんだろうか」

「もし私を食べたら、そのときはちゃんとおいしいって言ってね」

「覚えておこう」



 ぱたり、とシュクルが尾を振る。



「だが、よほどのことがなければ食べない。尾の手入れをしてもらわなければならないから」

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