元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 もう、誰もティアリーゼの食べ方を咎めたりはしない。

 好きなときに好きな人と喋りながら、自分の気持ちをいくらでも伝えていいのだ。

 それがどれだけ幸せなことなのか、教えてくれたのもまたシュクルだった。



「私、あなたが大好きよ」

「喜ばしい」



 ふるふると尻尾を振るシュクルに、またひとつ菓子を食べさせる。

 こんな時間がずっと欲しかったのかもしれない――。

 そんなことを思いながら、ティアリーゼは小さな幸せを噛み締めたのだった。
< 479 / 484 >

この作品をシェア

pagetop