元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
もし、バレンタインがあったら

「シュクル、はい」



 ティアリーゼに渡されたものを見て、シュクルは首を傾げた。

 ぱたぱたと振られる尻尾からは好奇心を抱いている様子が見て取れる。



「はい、とは」

「世間ではバレンタインなの。だからあなたに」

「ばれ」

「そう、バレンタイン」

「……わからない」



 とりあえずシュクルはティアリーゼからの贈り物を受け取った。

 特に尋ねることなく包装を開き、中から手のひら大の焼き菓子を取り出す。



「チョコレートクッキーよ。食べたことはある?」

「…………わからない」



 少し沈黙が長かったのは、シュクルがこれを知らない証拠とも取れた。

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