元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「妙な形をしている」

「それは……」



 ハート形と言うのだ、と言いかけて飲み込んでしまった。

 もうとっくに夫婦ではあるが、どうも気恥ずかしい気がしてしまって。



(さすがにハートの形はやりすぎかしら……?)



 今まで、ティアリーゼはこういった贈り物を作ったことがない。

 そんな幼少期は過ごしていないし、そもそも贈る相手がいなかった。

 だから少しだけ、そう、本当に少しだけ張り切ってしまったのだ。

 形はかわいらしいハートに。焼き時間まで長くなったのは、言わなければ気付かないだろう。



「ティアリーゼの分は?」

「これはあなたの分なの。私はないのよ」

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