元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「なぜ?」

「なぜって……バレンタインはそういう日だから?」

「私はティアリーゼと一緒がいい」

「……んむむ」



 自分だけ、というのは気に入らなかったのか、シュクルはティアリーゼの口に一生懸命焼き菓子を押し付ける。

 なぜバレンタインに自分で作ったものを? という疑問はあったが、シュクルの熱意に負けて端の方をかじらせてもらった。

 思っていたよりも苦いのは焦がしてしまったのもあるが、甘さを控えたからというのもあるだろう。

 ぱた、とシュクルが尾を振る。

 ティアリーゼの反応を待っているらしい。



「おいしいわ」

「そうか。よかった」

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