元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
なにか話しかけようとすると、ぺちぺち床を叩いていた尻尾の動きが止まった。次いで、本体がこちらを振り返る。
「なにか?」
「それはこっちの台詞なんだけどね」
「わからない」
「ああ、うん……」
(私にはあなたの方がわからないんだけど)
「あなた、私をどうしたいの?」
ティアリーゼがここへ来たのは、シュクルを殺すためだった。それが人間のためになると教えられ、育てられてきたからだ。
しかしどうやら父や周りの者が言っていた魔王の像とシュクルが重ならない。人に仇なし、強引に土地を奪い、大陸を蹂躙する恐怖の存在――にはどうしても見えなかった。
「なにか?」
「それはこっちの台詞なんだけどね」
「わからない」
「ああ、うん……」
(私にはあなたの方がわからないんだけど)
「あなた、私をどうしたいの?」
ティアリーゼがここへ来たのは、シュクルを殺すためだった。それが人間のためになると教えられ、育てられてきたからだ。
しかしどうやら父や周りの者が言っていた魔王の像とシュクルが重ならない。人に仇なし、強引に土地を奪い、大陸を蹂躙する恐怖の存在――にはどうしても見えなかった。