元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
なにも知らないまま、ただ供物として存在させてくれればよかった。そうすればこの状況にこれほど疑問を抱くこともなかったというのに。
「私を戦えるように育てたのは、あわよくばあなたを殺してくれたらってことだったのかしら」
「わからない」
「それはそれで都合がいいものね。心変わりして『供物』なんて言い出したのは、想像していたよりあなたが強く見えたから?」
「わからない」
「そうね、ごめんなさい」
わからないならわからないと、律儀に答えるところがまた、シュクルの憎めないところだ。彼は亜人と呼ばれるだけあって、人間よりもずっと獣に近い。ときどき会話が噛み合わないのはそのせいだろう。
「私を戦えるように育てたのは、あわよくばあなたを殺してくれたらってことだったのかしら」
「わからない」
「それはそれで都合がいいものね。心変わりして『供物』なんて言い出したのは、想像していたよりあなたが強く見えたから?」
「わからない」
「そうね、ごめんなさい」
わからないならわからないと、律儀に答えるところがまた、シュクルの憎めないところだ。彼は亜人と呼ばれるだけあって、人間よりもずっと獣に近い。ときどき会話が噛み合わないのはそのせいだろう。