元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 しゅうしゅうという蛇に似た鳴き声が、シュクルの喉から漏れる。

 数日過ごしてわかったのは、彼がなにかしら感情の高ぶりを見せているときにこうやって喉を鳴らすということ。今も、表情に出ていないなんらかの感情が高ぶっているらしい。

 床をぱたぱた叩く尾もその推測を裏付けていた。この生き物は顔ではなく、尾に感情が出る。

「それはこの間の話と関係があるの?」

「いかにも」

 真顔で頷かれ、ティアリーゼは額に手を当てた。

 先日、シュクルは言ったのだ。子供を産んでほしい、と。

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