元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「あなたたち亜人は、尻尾に触るのが求婚を表す、とかじゃないわよね」

「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」

 やはり律儀に答えると、シュクルはぺたりとテーブルの上に突っ伏した。顔色を窺うようにティアリーゼを見て、尻尾だけ嬉しそうに揺らす。

「私はお前が好きだ」

「だから、それがわからないの」

 ものすごく好意を向けられているのはティアリーゼにもわかる。尾に触れただけでこんなことになるとは思わず、対処に困ってしまった。

「残念だけど、あなたの気持ちには応えられないわ」

「そういうこともある」

(諦めが早い)

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