元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 ここにティアリーゼを住まわせるのは、自身の好意、あるいは欲求を受け入れさせたいという目的によるもののはずだ――と思っているが、基本的に淡々とした態度のせいで、どこまでそうなのかまったく読めない。

 シュクルに出会ってから何度もそうしてきたように、それ以上彼について考えるのはやめた。それよりも今後のことを考えねばならない。

「少なくともあなたを殺すつもりがない以上、私は勇者ではないのよね。というより、最初から偽物の勇者だったわけで」

「困りものだな」

「そうね、困りものね」

< 58 / 484 >

この作品をシェア

pagetop