元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 椅子に座っていたシュクルが、ベッドに座るティアリーゼのもとにそろそろと近付く。そして、許しもなく勝手に隣に座った。

 しゅうしゅうという鳴き声が微かに聞こえる。同時に、忙しなく動く尻尾が視界の隅をかすめた。

「ティアリーゼは、ここにいてはいけないのだろうか」

「普通はいけないと思うけれど。あなたはいいの? 私、人間なのに」

「我々は同じものだ。獣の本性が表面化しているかいないかの違いにすぎない」

「あなたはトカゲが出てきちゃってるわけね」

「トカゲではないと言っているのに」

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