元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「私を勇者と呼ぶのは構わないけれど、いつ旅立つ日が来るのかしら」

「時が来れば、でございます」

 淡々と答えたレレンを見やり、なんとも言えない顔で苦笑する。

「あなた、いつもそう言うわよね」

「ほかに言いようがないもので」

 軽妙なやり取りは、ティアリーゼが幼いときから変わらない。掴みどころのない態度は、苦手でもあり気楽でもあった。

 レレンの態度を咎めることなく、窓から視線を戻す。

「いっそ、こちらから出向いた方がいいんじゃないかと思うわ。その方が早そうじゃない?」

「そういう問題でもないのですよ、ティアリーゼ様」

「面倒な話ね」

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