元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「だってそうでしょう。あなたの仲間の住む場所を奪っているのは、私たち人間だわ。忘れてるのかもしれないけれど、私、人間なのよ」

「お前はお前で、それ以外の何物でもないと思う」

 ティアリーゼがなにを言っているのかわからない、とその目が語っていた。

 青い瞳のあまりにも純粋な色に、問うたティアリーゼの方が動揺する。

「お前は巣を壊さない」

「だけど……あなたを殺すつもりでここに来た人間よ」

「もう殺さない」

 する、とシュクルの尻尾がティアリーゼ伸びる。そして、手に触れた。

 甘えるように、慰めるように。

「お前の手は私に触れるためのものだろう。私を殺すためのものではない」

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