元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
「……勝手に決められても困るわ」

 トトはティアリーゼがどうするか反応を窺っているように見えた。

 シュクルのように好意的な空気は感じない。だが、ティアリーゼをどう扱うべきなのか見極めようとしている。

 その視線を感じながら、ティアリーゼはシュクルを見上げた。

(魔王って、もっと禍々しいんだと思ってた。でもこの人は違う)

 ティアリーゼは触れるためのものだと言われた手を、シュクルの尾に滑らせる。

 相変わらず不思議な触り心地だった。

 そして、それを不快に思わない自分がいる。

「人間よりあなたの方がよっぽどきれいね」

「……どう反応すればいい?」

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