元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 主に教えてくれるのはレレンだったが、「今回の候補者は父親の身分が低くても持参金が多い」だの、「貴族だから候補に入れたのにあんな年齢だと思わなかったらしい」だの、いつも相手の血筋が会話に紛れていた気がする。

 王族の血に下々の血が混ざってはならない――。誰に刻み込まれたわけでもなく、そういうものなのだとティアリーゼの頭には入っていた。

(もし私が結婚することになっていたら、相手はやっぱりどこかの王子だったのかしら。それとも……)

 ティアリーゼはずっと勇者だった。

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