元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
 それだけ自分に自信がある、という言い方には聞こえなかった。どちらかと言えば、どこか自虐的な。

 ティアリーゼは聞くかどうか悩んだ。

 だが、正しい言葉が見つからずに諦める。

 代わりにまどろんでいるらしいシュクルの頬に触れてみた。

「…………なんだ」

「男の人なのよね、あなた」

「そうだな」

「肌がすべすべで羨ましいなと思ったの」

「そこには鱗がないから」

「鱗のある場所は違うの? 別に尻尾もざらざらはしていなかったと思うけど」

「私もあまり考えたことはない」

「……鱗を触りたいって言ったら、怒る?」

「私に言う分には構わない」

 シュクルがゆっくりと身を起こす。
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