元勇者、ワケあり魔王に懐かれまして。
あまり重さを感じさせないその動作は、蛇が首をもたげるときのそれによく似ていた。
やはり人間ではないのだと思いながら、ティアリーゼはシュクルの動きを見守る。
(鱗ってどこにあるのかし――)
「待って!」
「うん?」
咄嗟に止められてよかったと心から思う。
シュクルは外で、しかもティアリーゼの目の前で服を脱ごうとしていた。
「なに考えてるの……!」
「お前の望む通りにしようとした」
「脱がないといけないような場所に鱗があるのね?」
「そう」
「じゃあ脱がないで。鱗に触るのを諦めるから」
「……なぜ?」
見るからにしょんぼりされる。