指先が触れるには遠すぎて
指先が触れるには遠すぎて
高校を卒業してすぐ、役所で臨時職員として働いた私は観光課に配属され、淡々と事務作業をこなす日々。
「日比谷さんって彼氏いるの?」
そんな時、お弁当を広げて年上の女性達と話していると在り来りな質問を投げかけられた。
「いないですよ、そんな相手」
それが始まりだった。
___その数日後に行われた歓送迎会に、その人は現れた。
「初めまして」
「あ、初めまして…」
「君が日比谷さん、だよね?俺は毛利、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
私と入れ違いで観光課から別の課へと移った23歳で5つ年上の毛利さん。
「え、毛利さんもお好きなんですか?」
「うん。まさかこれを知ってる人に会えるなんてビックリした」
「私も初めてこんなに話せる人に会いました」
優しくて話しやすくて、お互いアニメ好きという共通点があり仲良くなるのにそう時間はかからなかった。