指先が触れるには遠すぎて
「気持ちは嬉しいけど、立川さんをそういう対象として見れない……ごめん」
恋愛対象として見れないって、ならどうして、どうしてドライブしたりデートしたりしたの?
そんな思わせぶりな態度…。
「ごめん。今誰かと付き合うとか考えられない」
酷いよ、狡いよ。好きになっちゃったのに、その気がなかっただなんて。
「…っ……そ、か」
「ごめんね。俺、歩いて帰るから」
そう言って彼は私の隣を立ち上がると、背を向けて行ってしまった。
待って、と声も出ず思わず伸ばした手は空を切って下に落ちた。
今なら波の音で泣き声をかき消してくれるかもしれないのに泣けなくて、感情が溢れ返ったのは車で家に帰っている時だった。
溢れ出すものを我慢できず、声を出して泣いた。流れるそれを拭う余裕がないくらい、私はショックだった。
「う、うぅ…っ、ふ、ぅぅ……」
何がダメだった?私が子供だから?年がもう少し近かったり大人っぽかったらよかったの?
それともタイミングが悪かった?
ダメだ、いくら考えてもいい答えは見つからない。
「…っ、さい、あく」
私を振ったあの目、きっと、絶対に好きになってくれない目だった。望みも希望も何もない。
諦めろ、そう言わんばかりの。
私の10代最後の恋は砕け散るように幕を閉じた。