だけど本当は、きみが最初で最後の恋
…アレ、そういえば姫春があたしより遅いのめずらしいな。
「善岡来てないね」
弥生に言われて頷く。早くしないと姫春まで遅刻になっちゃうよ。
遅刻のペナルティーをアイツとやるなんて可哀想だから代わってあげよう。アイツと一緒、というしんどい行事はあたしのほうがまだ耐性がある。
不在2名を残してチャイムが鳴った。
姫春ってばどうしちゃったんだろう。メッセージを送ってみようと携帯を手にとった時にちょうどよく教室前方のドアが開いた。
先生だ。
アイツが間に合わなかったことによろこびが止まらない。え、器が小さい?アイツ限定だから安心してほしい。
「成くんだいじょうぶ?」
「ありがとう姫春ちゃん」
先生じゃなかった。そんなバカな。
がこん。手の力が緩み携帯がすり抜ける。
それを視界の片隅で弥生が拾ってくれたのは見えたけどそれどころじゃない。
「ええっ、成くんどおしたの?」
「怪我でもしたのー!?」
「みんなおはよう、大丈夫だよ」
「さっきベランダから見えたのにとーかちゃんだけ来たからびっくりしてたんだよ〜」
「心配してくれてありがとう」
ダレだよアンタ。
気色のわるい爽やかさに吐き気。いたいけな女の子たちを騙しているアイツのことが大きらい。