だけど本当は、きみが最初で最後の恋
いや…話すこと、聞くこと、あるでしょう。このままじゃ帰せない。ずっともやもやぐるぐるしたままになっちゃう。
ぐ、と息を飲み込む。
「昨日のアレ…なんだったの」
頬の感触がわすれられない。
「このまえのアレも、なに……?」
あやまられたけど、あの熱だって覚えている。
素直になれるようにあまり頭では考えず聞いたのにバイクにまたがる姿を見て、無視かよ、といらいらしはじめる。もうずっとこうだったから気が短いところは仕方ない。
もう家に入ろうかな、なんてやさぐれたように思っていると、ヘルメットをかぶる手前。
「とーかが素直になってる…おれが気にするのは弥生とか他の男じゃなくて姫春ちゃんだったのかも…」
ぼそぼそつぶやいてるけどよく聞こえない。悪口なら聞こえるように言えよ。
「なんて言った?」
「…橙花、明後日、デートしよ」
──── デート!?
「11時に迎えに来るから、いつもみたいに遅れんなよ」
「え、え、ちょ、ちょっと!」
近づこうとしたらエンジンをつけて行ってしまった。
ちょっと待ってほしい。
急にそんなことを言われても。
「デートって……」
幼なじみとかくされ縁のあたしたちには相応しくない言葉すぎる。それに明後日は日曜日だけど、こっちの予定くらい聞いてくれたってよかったと思う。予定があったらどうするの?ないけど。
ワガママにも程がある。
……だけど、聴いてあげるしかない。
だっていつの間にかアイツは、あたしより早くどこにでも行けちゃうようになったんだもん。