だけど本当は、きみが最初で最後の恋


そんなこと一回も思ったことないくせにウソくさい微笑みを貼り付けてる。なんでこんなにあからさまで下手くそなのにみんなにはバレないんだ?

なんなんだコイツは。偽ってまでしてそんなにモテたいのか。理解できない。


今すぐその微笑みをくずしてやりたい衝動を必死に抑えていたけど、成咲の手はあたしと違い容赦なし。


頭に伸びてきた手が撫でる、なんてとうてい言い難いかき混ぜるみたいな速さで回りだす。



「ちょっ、」


ちょっと待て、今日はきれいにサイド編み込みツインテールができたって言うのに!

やめろ!と振り払う。怒りで身体中が熱い。


「あ。ごめん、可愛くて撫でたら髪がくずれちゃった」


ぞわっ……。


「…クソ男」

「ゆるして、幼なじみの仲だろ?」


キャアキャア猫みたいに黄色い声と羨む声が教室を舞う。頭痛がします、神様。

幼なじみなんてぜんぜんうれしくない。代われたらいくらだって代わってやるのに。


文句を言おうとしたら先生が来てしまった。

不完全燃焼。

やっぱり、毎日再確認してるけど、成咲のことが心底大きらい。


ウソつきで、軽薄で、空っぽな人間。

ママが可愛いからって頼られるがままに、バイクを10分走らせてあたしの迎えなんか来て。その後20分歩いて駅へ。電車で4本先の駅で降りて5分歩いて学校到着。それを帰りにもする。時間のムダ遣い。

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