だけど本当は、きみが最初で最後の恋


本当はめんどうで、嫌々来てるくせに。そんなんされたくもないわ!


「すげー睨んでくるけど目痛くならないの?」

「話しかけてこないで」


大きらい大きらい大きらい。お互いにそう。


なのになんで高校まで一緒・3年間クラス一緒・席替えしてもとなりの席になる確率99.9パーセントというもはや要らない奇跡。

意味がわからない。どっちかが死ななきゃ一生離れられない先祖代々受け継がれてる呪われた縁だったらどうしよう。


思い切り笑ったときだけ右まぶた下にえくぼができて、そこに涙溜めちゃうような弱虫のくせに。

爽やかからほど遠い策略バカやろうなくせに。



「もお。とーかちゃん、そんなに怒らないで。きれいな顔がだいなしになってるよ」


前の席に座る姫春の細い指で頰をつままれる。うう、痛くないけど心は切ない。

その顔がブスだったからか横からぶふって笑い声が聞こえてきたし。最悪。いや姫春じゃなくてアイツが。


「おこってないよ。コイツにそんなの無駄だもん」


ただ嫌なだけ。

朝から文句を言いつつ送り迎えしてくれちゃうところも、モテるために自分を作り続けるところも、それでもなんだか振り回されている気がしてきて、情けない自分自身のことがうんざりするほど嫌なだけ。


出会ったころの成咲は笑っちゃうほど泣き虫で、すぐに転ぶしすぐに体調をくずしてびーびー喚くのが日常だった。

それは今も変わらない。滅多に泣かなくなったし、カッコつけて人には見せなくなったけど、元の姿を知っているあたしからしたら今の姿の方がダサい。

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