だけど本当は、きみが最初で最後の恋


弥生にもとにかく朝は大丈夫だと伝えて、あたしはその日以来初めてのひとり登校をしている。

ママはちょっと面倒だから弥生と近くで待ち合わせしてるって嘘をついちゃった。でも、嘘は得意だからバレてない。


「何もなかった?」


アイツはいつも学校にギリギリか、ちょっと遅れてくるようになった。

隣の席だから声をかけてくる。「うん」とだけ返す。


ホームルームが終われば「気をつけて帰れよ」「いちいち言わなくてもわかってるよ」とだけ言葉を交わして、すぐに教室を出ていくアイツのことを…見送ってなんかやらない。



「気にならないの?」

「へ…」

「なんで送り迎えできなくなったのか。どうせ聞いてないし言われてないんだろ」


弥生はなんでもお見通しだ。

それでもここ数日はほっといてくれた。たぶんだけど痺れを切らしたんだと思う。


「言わないから聞いてあげようかなって思ってはいるんだけど、アイツ、すぐ帰っちゃうし…」

「休み時間に聞くでいいじゃん」

「貴重な休憩をアイツと会話するのに使っちゃったらもったいないし…」


「とーかってさあ、言い訳するの癖になってるよね」


バシィッ!って効果音がお似合いのはっきりとした台詞を、苛立ちを押さえたような笑顔で言う。

イケメンのその表情って本気でこわいんだよ。鏡を見せてやりたい。弥生は時々本当に厳しい。


とはいえ毎回自覚していることを指摘されるので反論はできず。


< 137 / 169 >

この作品をシェア

pagetop