だけど本当は、きみが最初で最後の恋
ああ、弥生と幼なじみでよかったって。
自然と笑顔になれる、尊敬できて、認められて、一緒に大人になっていく、易しい時間。弥生となら過ごせるんだろう。ぜったい、絶対にそうなんだろう。
──── だけど。
「…っ、ごめ……」
思わず泣いてしまった。泣いて、ごめん。
頬を包む手のちからが緩んで、あたしはそこから、抜け出して。もう一度って頬に添えてもらうことは、できない。
「ごめん、弥生のことは、とても大事だけど…」
タイプだし、弥生の好きなところを数えたら、もういっぱい出てきて最初に言ったことからわすれちゃいそう。
それでも。
「ほかに、好きなひとがいる」
「…うん」
「う……うれしかった。初めて誰かに好きって、言ってもらった。それが弥生だなんて、光栄すぎて……ありがとう、ほんとうに、ありがとう」
「うん」
涙をぬぐってくれる、甘い指。
だけどこんな時に思い出すのは、雑な言い合い。
隠していた気持ちが表に出た。
もう嘘をつきたくないと、溢れるように。
「とーか、俺のことちゃんと考えてくれて、ありがとう」
本当はたくさん考えてたよ。
大事だから、たくさん考えてた。
弥生のこと、今までにないくらいたくさん。そうしたら大好きだなって思った。
だけどそれは言えないね。
きっとわかってくれるだろうから、言わなくていいか。
ありがとう、弥生。
今だって、いつまでも言い逃れようとするあたしのこと、呆れてお世話をやいてくれたんじゃないかな。