だけど本当は、きみが最初で最後の恋
成くん成くんって黄色い声に呼ばれている。となりの机は休み時間になるたびにとなりの席の成咲のことが見えなくなるまで人が集まってくる。
おもしろくない。
今みんなが見ているのはニセモノ。
「あれ、アイツは?」
本日最後の授業が終わった。女子はグラウンドで、男子は体育館で体育をしたあと、教室に戻るとヤツの席が空っぽだった。
弥生に聞くと気のせいかにっこり不敵に笑われた。なにその表情。
「成ならめちゃくちゃ体調悪そうだったから保健室行かせたよ」
こっそり耳打ちされた内容に顔をあげる。
「最近平気だったのに!?」
「とーか、他の子にバレるから静かに」
シッとひとさし指を口元に当てる。何その仕草かっこいい……おっと。
まわりを見渡すと何人かがこっちを見ていたからごまかすようにへらりと笑う。アブナイ、他の子が成咲の居場所を知ったら集まって休むどころじゃなくなる。
HRがはじまる鐘が鳴った。
自分の席に戻ったけど、どうしてかな。そわそわしてしまう。
こういう気持ちになりたくないのに、アイツのせいだ。
くすりはちゃんと持って行ったのか…とふと思い机のなかを見るとオレンジ色の缶ケースが置き去りにされてあった。ついでにミネラルウォーターもかばんの中に入ったまま。
信じられない。自分の身体と何年付き合ってるんだよ。寝るだけじゃ治らないくせに。