だけど本当は、きみが最初で最後の恋
成咲ん家や我が家は確かにあの事件があったにしろ、あの一件を引きずりすぎている。
登下校以外にも、うちの学校はけっこうレベルの高い進学校でバイトも申請しないとできないんだけどあたしは高校生のうちにやってみたくてその話をしたら断固として許してくれなかった。
成咲なんて本気でバイトするっていうならおれもそこで働くって言い出す始末。
アンタのなんて労働にならないよ。けんかが絶えなくてバイト先に迷惑をかけるのがオチだ。
告白なんてされたことないのに「とーかちゃんは可愛いからこわい男の子に目をつけられちゃったらどうしよう」とかいらない心配をしてくるママ。
それを鵜呑みにしてか、どうやら陰ながらあたしに向けられた好意も敵意もアイツによって阻まれていたこともつい最近知って。
よく県外の大学を目指すことを許してくれたなって思うし、アイツはよくあたしから離れようと思ったなって思う。
みんな成長しているのかもしれない。だから、あたしももう心配されるがままは嫌なんだよ。
そういうのわかってもらいたいのに。
「とーかちゃんが飲んでるの新発売のやつ?」
「そうそう。姫春ひと口いる?」
「ううん。実はわたしもこっちのフルーツのほう買っちゃったんだ」
ホームルーム前の休み時間。もうこれからひとりきりの放課後ライフが待ってると思うと楽しみすぎて飛び跳ねるような気持ちをなんとか抑えるために飲み物を飲んで落ち着こうと奮闘中。
姫春はあたしが買った新発売の野菜ジュースと同じ種類のボトルを持ってる。