だけど本当は、きみが最初で最後の恋


コンビニで買えるんだけどボトルが可愛くて映えるって発売前から話題だったの。

それを…姫春が持ってるなんて映えでしかない。思わず写真をパシャリ。


「はあ、癒し~」

「ねえそういえば今日弥生くん休みだからひとりで帰るの?」

「そうなの!もうちょー楽しみ!」


念のため、隣のめんどくさいヤツには聞かれないように小声で、滾る気持ちを口に出す。


「楽しみにしてるなら水差しちゃうかもしれないけど、わたしが送って帰ろうか?」

「なに言ってるの。姫春の家は一駅だし駅前なんだからあたしのほうまで来たら大変じゃん。それに今日は塾でしょう?放課後寄り道する時間もないだろうし、大丈夫だよ。しかも姫春に何かあったら大変だもん」


あたしのことを送った帰り道で姫春が…なんて考えただけで恐ろしい。絶対ダメ。


「オマエ何飲んでんのそれ」


おーっと。あたしと姫春のラブラブスウィートタイムを邪魔してくる最悪な声が聞こえてきたなあ。

でもまあ今日はね、ひとりで帰れる最高の日でもあるから寛大な心でゆるしてあげようね。


…あ、でも。


「これ?オレンジジュースだよ。飲む?」


ボトルの中身は見えるようになってるんだけどオレンジ色だからバレないだろう。

首を傾げて差し出すと受け取って、口をつけた。
引っかかったな!


「うわ、は!?これにんじんの味する…っ」


げほげほと咳き込んでいる。

いろんな野菜が入ってるんだけどにんじんの味がかなり強い。これは正真正銘のイヤガラセだ。


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