だけど本当は、きみが最初で最後の恋


他校の女の子とか、もういっそその子と一緒ににんじんに埋もれてしまうばいいのに!


「あっれーオレンジジュースだと思ってたのに間違えちゃったなあ」

「テメェフザケンナ」

「成咲くん、まだにんじんがにがてなんですねーおこちゃまですねー」

「オマエの舌のほうがおかしいんだろ」


「…コドモな成咲に守ってもらう必要ないから。もうあの約束は、気にしなくていいよ」


「……は?」



変わらないアンタのほうがずっと安心する。


女の子みたいだった見た目。天使みたいにゆるく生きていた成咲。

小さくて、か弱くて、泣き虫で、可愛くて。

そっちのほうが本当は、アンタらしくていいよ。


「咲乃ママとうちのママに無理やり約束されただけなのに、今までごめん」


好きな女の子がいるんでしょう。
その子と一緒にいたいんでしょう。

そうすればいい。


無理に一緒にいられたって、ごめんって思われながら一緒にいたって、何かに縛られてるだけじゃ虚しい。


「なんでそんな話になるんだよ」

「矢川先生来たから静かにして」


本当に守らなきゃならない子ができたならそっちを優先してほしい。

あたしのことなんてもう気にしてほしくない。


(なんて、嘘を)



「おまえら、最近不審者情報あるから寄り道しないで真っ直ぐ気をつけて帰れよ」



矢川先生の突然の言葉に、野菜ジュースのボトルを豪快に落としてしまった。


「おい永作、飲むなとは言わないけど落とすなよ」

「とーかちゃん……?」


あーあ、ジュース、もったいないな。

というか早く拾わなくちゃ。


< 144 / 169 >

この作品をシェア

pagetop