だけど本当は、きみが最初で最後の恋


成咲のどこかをぎゅっと掴む。


もう要らないよって何度口にしたって、心のなかじゃ、そんなこと思ったことがない。

行動もできず、むしろ言葉とは反対に、この手は成咲を離そうとしない。


お願いだよ。

虚しいのは嫌なんだよ。
だけど変わるのも嫌なの。


──── あたしのこと、好きになって。


なんて、そうなってもらう方法も、もうわからないのに、バカだ。



でも、確かにさっきはバカみたいに取り乱してしまったけど……。


「何言われても一緒に帰るからな」

「やだ!ひとりで帰る!」


そう言って教室から出ようとしたらかばんを奪われた。


「早くしろよ」


早くしたいなら置いてけバーカ!

矢川先生がいきなり不審者なんて言うからちょっとびっくりしちゃっただけなのにあたしのひとり下校タイムが実現できず仕舞いだなんて!

心配性な幼なじみたちから逃れられるのは今日しかないと思ってたのに…。


でもさっきけっきょく頭が真っ白になっちゃってコイツと姫春が片づけてくれたから強く出れず。


「というかアンタ、他校の女の子はいいわけ…?」

「え、オマエ知ってたの?もしかして弥生から聞いた?」


聞いてないけど、頷いてみる。すると成咲が深いため息をついた。


「他の子の送迎してるなんて話したらオマエが不機嫌になるから言うなっていったのになー。弥生って本当世話焼きだよな」


それはわかる。たぶんあたしたちが一番世話焼かせてると思う。むしろあたしたちと知り合って世話焼きになったのかもしれない…弥生ごめん。


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