だけど本当は、きみが最初で最後の恋
「やっぱり浴衣見に行こう!」
「へ!?」
「無理やりはしたくないけど、背中押す人がいないといつまでもとーかちゃんは自分に素直になれないでしょ!」
ぐっと手を掴まれて、引っ張られて、まるで背中を押されているような気持ちになる。
さっきえこちゃんと入ってたショップに連れて来られる。
本当は来たときから惹かれていたことがバレていたのか早々に藍色の生地に日輪草が描かれた浴衣を渡されて、有無を言う間もなくレジに押し出された。
姫春、強引…でも、この浴衣は可愛くて、着てみたい。
「成くんと一緒に行けばきっとこわくない」
「……」
「ふたりなら乗り越えれる。絶対、そう思うよ」
ショップ袋の中で綺麗に畳まれた浴衣。痛い出費。使わないわけには、いかないのかな。
何より親友の、力強い言葉。
「…ありがとう、姫春」
「浴衣、ぜったい可愛いよ。次こそ成くんも反応するんじゃないかなあ」
「いやそれはないな」
気が利かないもん。動きにくそうだなって思うだけかもしれない。
それに成咲が行くって言ってくれるかわからないよ。ビビりだもん。こわいって言うかもしれない。
お店を出ると、なぜか成咲と弥生がいた。
「え、なんでいるの?」
「呼んでおいたの。わたしが送ったらどうせ成くん呼び出してわたしのこと送らせようとするでしょう?」
なんでバレてるんだろう。姫春ってすごい。
「俺が善岡を送るからふたりで帰りなよ」
「えっ」
「じゃあまた」
そう言ってふたりで仲良く言ってしまった。あのふたりはけっこう仲良しだ。
残された者同士で顔を見合わせる。