だけど本当は、きみが最初で最後の恋
まるで真夜中の海みたいな藍色と、そこにぱっと華やかに広がる黄色の日輪草。
帯は筒状花の部分とおそろいの茶色にして、お飾りは赤をつけた。
髪飾りは赤と黄色の水引きにして、悩んだけど髪は上げた。単純に下ろしていると暑いから。それ以外の理由は、今はない。
先に髪を結わいているとママが「着付けるよ」と言ってくれた。最近あまり話してないから頼みにくくて自分で動画を見ながら着ようかと思ってたから、うれしかった。
「とうとう行くのね」
この世の終わりみたいな顔をしてるから笑ってしまう。
「…成咲と一緒だから心配しないでいいよ」
「うん。でも、何かあってもふたりだけでなんとかしようとしないで、連絡してきなさいね」
「うん」
ママはいつだって心配そう。前はもっとちゃっかりおてんばな人だったのに、しっかりしようとするようになった。
それはきっと、あたしのためだ。
「ママと咲乃ママが成咲に約束を取り付けた時、実は話を聞いてたんだ」
つぶやくようにそう言うとおどろいた表情を向けられる。
「勝手なこと言って最悪だって思ったけど…それ以上に、成咲がずっと傍にいてくれるんだって思うとうれしかった」
「橙花ちゃん…」
「でもそれは、これ以上続けてたら、成咲にわるいから」
だからもうその約束はみんなわすれてほしい。
あたしもわすれる。わすれたいって、ずっと思うことにする。