だけど本当は、きみが最初で最後の恋


やりかたをいっぱい間違えた。もう間違えたくない。だってもう守られてばかりの子供じゃいられない。


「だけどこれからもずっと一緒にいたいと思ってるから…ちゃんと、自分の気持ち、言ってみる」


ああ、恥ずかしい。ママに決意表明みたいなことをするのも、あたしの想い筒抜けみたいな様子の姫春や弥生も、本当に恥ずかしくさせる。


自信はない。

どーでもいいもきらいだも、何回も言われたし、言ってきた。


今更って言われるかも。びっくりされて、笑われるかも。キモチワリィって言われるかもしれない。だけどもうそれでもいいかなって。


「がんばって、橙花ちゃん。成くんはあなたの王子様だからきっと大丈夫よ」

「王子様?……フッ」


あんな雑でうるさくてめんどくさい王子様はちょっと嫌だけど、もしもそうなら、そうだったらいいな。


待ち合わせ時間ぴったりにピンポンと呼び鈴が鳴った。

化粧良し、髪型良し、荷物良し、浴衣良し。


今日は一回で済んだ呼び出し音。

外に出ると、紺色の浴衣を着た成咲がいた。


ピアスがついている耳のほうだけに髪をかけて、巾着袋を持ってる。


「かっこいい……」


遊園地に行ったときは視界の片隅でしか見れなかったのは、こうやって素直になりたくなかったからだ。


「は、はあ!?何言ってんだよ!」

「や、い、今のは、馬子にも衣裳って意味だからね!?」

「……それでも、オマエに褒められたの初めてすぎて…っ」


片手で口もとを押さえて、耳まで真っ赤に染めている。玄関の明かりで見えてるよ。


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