だけど本当は、きみが最初で最後の恋


そうだね。後悔はもうしたくないなあ。


「成咲のこと、…きらいだってたくさん思ったことある」

「は?いきなり悪口言うなよ」

「めんどくさいし、心配性すぎるし、いつまでも気にしてるし、それを悟られないようにけんか吹っ掛けてくるようになって、それが当たり前になって、結果毎日腹が立ってる」

「そんなの、おれもだからな」


「わかってるよ。…でも、…でも、好き……だよ」



心臓が脈打つ。キスしたときよりも、キスされたときよりも、ずっと大きく響いてる。

寿命が縮まるどころか、むしろ今消えてしまいたいくらい恥ずかしい。なにより、不安だ。不安でたまらない。


きっともう元には戻れない。

だけどもともと、あたしたちの間に確かなかたちなんてなかった気がする。


「え、今 ────」


成咲が戸惑ったような声で何かを言いかけた瞬間、心臓の音よりも大きく、花火が音を鳴らして打ちあがった。


やっと見れた。
一緒に。


「わ、あ……」


それはすごく綺麗だった。



成咲も空を仰いでる。

今はもう、花火に集中しよう。邪念は追い払おう。

そう思っていたら肩を小突かれる。


人が真剣になろうとしてるのになんなんだよコイツは。タイミングってものを考えられないわけ?こっちは、緊張とか不安で泣きそうなのに。


「とーかは泣かないって言うけど、やっぱり、オマエがこわいと思うものからは泣かないでいいように一番近くで守っていきたいんだよね」


こっちは毎日鍛えられてますからね。そう簡単に泣いたりはしない。


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